
新規クラブを開業する場合、立地・施設・料金の3種の神器に加え、人材の採用・育成が成功の鍵になります。既に店舗運営をされている企業なら経験もあり不安も少ないでしょうが、新規参入ともなれば不安も大きいと思います。今号では24時間フィットネスジム開業件数が豊富な当社が、どのように採用・育成サポートをしているのかを例に解説していきます。
24時間フィットネスジムに拘る
24時間ジムも全国津々浦々に展開されていきました。既に供給過多であり淘汰のフェーズに入っていることはみなさん実感されていると思います。
近年では中国製コピーマシンを揃えた格安タイプ、小型格安タイプなど様々なバリエーションが派生していますが、再現性が高く真似されやすいものばかりです。
5年、10年と運営実績を積み、会員成果を出すことを目指すクラブ運営では無く、廃れていくのは時間の問題です。
私は24時間ジムブーム初期から、ファンクショナルエリア、スタジオなどを併設することを推奨し、プールレス総合クラブと24時間ジムの間を狙った施設プランを提案してきました。規模は大きくなりますが、長期的な戦略が組めるためリスクは逆に低くなると考えています。では長期的戦略とは?について解説をしていきます。
スタッフ採用
オープン当初は一般的な24時間ジムと同様に、スタッフは受付と清掃が主な仕事となります。
オープン前にスタッフ募集を行うと、多くが男性でトレーニング経験がある方が多数応募してきます。オーナーからすると経験者で即戦力に思え、喜んで採用を検討してしまいがちですが、私は採用を見送るように強く進言しています。
採用を見送る理由は、大抵が自分のボディメイクトレーニングをしたいだけ!であることがほとんどで、トレーナーとして採用しても自分のボディメイクプランを披露するだけで、集客にプラスになることは無いからです。
なので、HPに大会出場実績などを大体的にPRしているクラブを見ると、逆に残念な気持ちになります。パーソナルジムなら良いと思いますが、24時間ジムは様々な目的を持った方が来館しますので、ボディメイクに寄ったクラブと見られてしまうことはデメリットになりえます。更に辛辣な意見を言わせてもらうと、パーソナルジムで食べていく気概や能力がない程度の方が、24時間ジムへランク落ちして就職をしようとしているのです。多くの24時間ジムがこの採用失敗を犯し無法地帯となっています。個人的な趣味であるボディメイクはクラブ運営の専門知識ではないこと後悔してからでは遅いのです。
では、採用はどうすれば良いのか?運動好きな「女性を軸」に採用していきます。私は販促も館内ビジュアルも、館内TVで流す動画も全て女性のものしか使いません。
集客において軸となる40歳以下の男性は、マシン&フリーウエイトのラインナップを紹介すれば集客できますので、常に女性と中高年集客に意識を向けます。
オープン研修
採用スタッフの経験値、周辺クラブの状況によって変わりはしますが、この段階では、通常の24時間ジムにプラスでストレッチエリア指導が加わる程度となります。ファンクショナルエリア・スタジオは完全にバーチャルレッスンに頼ります。具体的な研修内容は以下の通り。
・ストレッチ
・筋膜リリース
・骨盤体操
・スタビライゼーション
・基礎運動理論
これ以外には指導時に会話ネタとなる健康&綺麗になるためのキーワードを教え込んでいきます。
・基礎体温
・低血糖
・ホルモン感受性リパーゼ
・姿勢改善の重要性など・・・
上記研修が終了後に必須なのが競合体験です。
新入会員の不安・寂しさを知ることで、自分たちの役割を知ることができ、差別化を知る事でセールス力を高めることができます。
数ヶ月経過後
初期の研修内容を見て、何故研修内容をセーブしているのか?疑問に思う方もいるでしょう。理由はスタッフ初期定着の低さです。
外部講師を呼んでの研修や資格取得をサポートしても・・・あっけなく退職していきます。クラブ側も適性があるのか?本当に続けてくれるのか?を判断できるまではスタッフ教育にお金をかけられません。その判断段階が過ぎたなら、次の研修ステップはファンクショナルエリアとなります。
クラブオープン後、びっくりするほど利用が少ないのがファンクショナルエリアです。その理由は、初期で入会してくるトレーニングマニアには興味がないエリアである事と、初心者も使い方やどんな効果が期待できるのかわからないので利用しないからです。
要するにスタッフ指導が必要なエリアであることがわかってくるのです。
・TRX
・バトルロープ
・ケトルベルなど・・・種目は多いですが、中高年の機能向上・維持も狙ったプログラム構築が必須です。24時間ジムでは集客が少ない中高年層を取り込むには、ファンクショナルエリアを活性化しなければ実現しませんし、競合クラブとの差別化にもなりません。
日頃ストレッチエリアでコミュニケーションが取れ、仲良くなった会員であれば、研修後にファンクショナルエリアに引き込むことは簡単なはずです。ミニレッスンを組み込み、会員の成果を集めていくことで販促に繋がりますので、新規入会で中高年層が見込めることになります。
ファンクショナルエリア以外で指導を強化するポイントとしては、カーディオエリアです。
各マシンには数多くのプログラムが用意されているのに、全く利用されていないという宝の持ち腐れ。中でもランニングマシンは長時間歩くことが良いことだと考える方も多いので、効果的な歩き方を指導するなどし、マシンの回転率を上げながら会員満足度も上げていく。これは総合フィットネスクラブに比較して、圧倒的にカーディオマシン数が少ない24ジム系では必須だと考えます。
私はパワーウォーキングを推奨し、10分以内で満足させる指導をさせています。また、ランニングマシンは所詮床面がモーターで回っているので、外を走る負荷に比べると圧倒的に劣る、特に大腿二頭筋やカーフは同じようには鍛えられない事を指導し、クラブお勧めランニングコースを紹介するようにしています。
半年以上経過後
今までバーチャルに頼っていたスタジオやジムのパーソナル指導を対応できるように研修していきます。
スタジオでは集客も見込め、運動神経が必要ないピラティスをメインに研修を行います。5,000円程度で販売されているスパインコレクターを使うことで効果を感じやすく、何より前でリードを取らなくても対応できるレッスンのため、スタッフも不安が少なくて済みます。
プレコリオなどを取得させるのも一案ですが、リズム感や運動神経が求められるため全員が合格できるとは限りません。担当クラブで全員不合格をいただいた苦い経験があり、前でリードを取るプレコリオは外部インストラクターに委託してコマ数を少しずつ増やすのが賢明だと思います。
トレーニングジムでのパーソナル指導も開始していきます。
パーソナルは2種類の設定が必須で、ボディメイクコースと機能改善コースになります。
ボディメイクコースは外部トレーナーに任せ、機能改善コースをスタッフが担当します。
今までの研修が全て機能改善コースのベースとなっていますので取り組みに不安は感じません。トレーニングマシンも半年以上継続するとスタッフのカラダもできてきますし、指導にも自信も出てきます。機能改善を望む方はハードな筋トレはそもそも望まないので、別に大会出場する選手でなくとも問題なく指導できます。
オープン後1年でクラブは完成する
24時間ジムの多くがオープン初期に会員数のピークを迎え、以降は競合の出店に怯えながら運営をする日々を過ごします。立地・施設・料金の3種の神器で改善できることは、料金のディスカウントしか道はありません。それは破滅への入り口です。
指導サービスを加え、日々進化をし、1年後にはこのようなクラブに成長するぞといった明確なビジョンを持つことが大切なのです。
ハードルをクリアするごとに、新たな会員層が開拓できるネタも生まれ、スタッフもやりがいを感じてきます。
そんな24時間フィットネスジムに私は拘っています。
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