地政学リスクが高まっています。中東での戦争も終わりが見えず、原油価格も上昇、ドル円も150円に迫るなど、四方八方見渡しても明るい話題が見当たりません。
インフレでモノの価格はどんどん上がり、逆にお金の価値は下がっています。
貯金を減らさないためには、株式や債券投資など行い対策しなければなりませんが、株式市場もアメリカがリセッションするのでは?などと囁かれるほど不安定です。
頼みの綱の給与も後追いで上がっていくでしょうが、世の中はまず出費を抑える方向に向かうはずです。
「いやいや、コロナ規制も解除され、旅行などレジャー賑わっていますよ!」そんな反論も聞こえてきそうですが、実際にレジャーを楽しむ中でインフレを実感し、徐々にメディアから聞こえてくる社会情勢のニュースを知ることで不安は増していきます。
コロナ後の浮かれ気分も過ぎれば、財布の紐はキツくなるはずです。
不謹慎かもしれませんが、定額レジャーであるフィットネス産業にとって、今後さらに追い風が吹くと考えられます。
今号では、会員数の下落が止まらない24時間ジムは追い風に乗れるのか?を考えていきます。
会員数が昨年に比べ20%↑ダウン!?
当社には既存24時間クラブからの相談も非常に多く、1年で会員数20%以上のダウンは当たり前。今後の見通しがつかない。打開策が見つからない。そんな相談内容が大多数です。当然相談するくらいなので業績は悪いクラブとなりますが、長年クラブ運営に携わってきた業界人であれば、今の結果は当然だと思いますよね。
相談の要点をまとめると、
・競合が増えて入会数が激減
・20-30代の女性の退会が多い。
・中高年の退会が多い。
・バーチャルスタジオの利用がない。
・パーソナル売上が上がらない。
・FC本部が何も指導してくれない。
シンプルな運営なので相談内容も上記程度となります。
競合が増えて入会数が激減
新規事業で24時間ジム進出。聞こえはいいですがフィットネス業界未経験ということです。マシンを買い、セキュリティを契約すればオープンできてしまう。参入障壁が低いビジネスと勘違いしているのでクラブ数がグングン増える。同じようなクラブが増えれば商圏は狭くなり(郊外でも2km程度)、対象人口が減るので会員数も少なくなる。当然の結果です。セルフ型24時間ジムは自社所有テナントへの出店など、とことんコストを削らないと生き残りは難しくなる。同じ内容なら安いほうがいいですからね。
経営が厳しい末期24時間ジムの見分け方。
1.スタッフタイムが短い。
2.ノースタッフデーが週2日。
3.会員種別が増えた。
削る部分は人件費しかないので、最低限のローテで運営することになる。
20-30代の女性の退会が多い
YouTubeなどのSNSの影響によって花開いた筋トレブーム。その受け皿となった24時間ジム。80%程度が男性。その内大多数が40歳未満の男性。クラブ仕様もそのニーズに沿って作られています。当然、女性会員が楽しめる施設環境ではない。最近では女性専用エリアなど設けて女性ニーズに応えようと努力しているクラブも多いですが、新規店舗でなければ対応することは難しい。
コンサル提案:商圏人口が問題なく、店舗規模で競合に負けている。そんな店舗の場合、女性専用施設へと方法転換をして再出発することをお勧めしています。24時間営業も廃止して、光熱費削減も提案をします。
中高年の退会者が多い
前述と内容は同じですが、トレーナーへの依存度が高く、コミュニケーションをある程度求める方が多いので、セルフ型24時間ジムとは相性が悪く定着は難しい。中高年の大多数は本格的なフリーウエイトトレーニングを希望しないので、「ちょこざっぷ」で同等のトレーニングが行えます。同じセルフクラブであれば会費が半額以下のクラブを選びますから、既存会員は流出し、新規会員も獲得できないという流れができてしまいます。
コンサル提案:夕方まではトレーナーを配置し、指導サービスを提供する。指導するためには既存スペースを削り、ファンクショナルエリアやオープンスタジオスペース、中高年に好まれる運動器具を設置するなど多少のリニューアルが必要になります。私のコンサルクラブなどではBFR加圧プチパーソナルを会費内で提供して、効果と接客での満足度をUPさせる戦略をとっています。
バーチャルスタジオの利用がない
まず、バーチャルスタジオで成功している店舗を私は知りません。内容は良いのは間違いないですが、何故会員は利用しないのか?答えは簡単でスタジオレッスンを求める方はフィットネスクラブや専門スタジオに通うからです。
コンサル提案:規模が小さいなら女性専用エリアやパーソナルルームなどへリニューアル。あり程度の規模があれば、有人レッスンを導入提案します。私のコンサルクラブでのバーチャルスタジオの位置付けは、スタッフがレッスンインストラクターとして育つ&フリーインストラクターを採用するまでの場繋ぎとして導入。24時間ジムなど小型店舗はオープンまでの期間も短く、スタッフ採用もどんな子が応募してくれるのか未知で、採用してもすぐ辞めてしまう場合もあるので、オープンからレッスンを提供して行くのは難しいのです。
スタジオプログラムに関しても、専門店が多いヨガ系を減らし、総合クラブよりさらにアクティブなレッスン構成で差別化します。特に総合クラブとの差別化としては、特殊照明、スーパーウーハーなどを使いライブ感と小振りなスタジオならではの一体感を演出します。
フリーインストラクターを採用する際も、獲得したい会員年齢層にあったインストラクターを、実力が劣っていても将来性に期待して採用していきます。
パーソナルの売上がない
売れるクラブと売れないクラブでとても差が出るのがパーソナル売上。まず売上が上がらないクラブは、ホームページやSNS広告などでパーソナルのPRができていない。なので、パーソナルを期待する会員がそもそも入会してこない。元々ニーズのない会員に販売できるはずがないということです。
コンサル提案:モニター成果を掲載した専用ホームページを別に作る。ニーズのある会員を集める販促を行う。会員種別もパーソナルトレーニングがパックになったプランを追加する。クラブで日常的にパーソナルが行われ、成果が出た会員をPRすることで、既存会員も目を向けてくれるようになります。結果、社員1名あたり月間100セッションをこなせるクラブへと成長できます。現在では競合が増えすぎて経営難のパーソナルジムが多く、転職希望者も多い状況ですから、給与システムにインセンティブを加えるなどすれば、スタッフ確保は苦労しないはずです。
FC本部が何もしてくれない
立地・施設・料金システム以外のノウハウがないFC本部が多いのは当然。
オープン数ヶ月でピークを迎え、その後は会員数が減って行くだけ。競合が我慢比べに負けて閉店して行くことを願いことしかできません。
施設はオープンした時は新品ですが、月日が経てば中古品です。新品で買わなかった商品を、同じ値段で中古品を買うことはありませんよね。価値が下がるのとともに会員数は下落するのです。それを防ぐにはどうすればいいのか?ソフト面を強化するしか道はありません。
施設は中古品となっても、会員の成果がたくさん出てくれば競争力は補えます。初期会員にならなかった地域の方々にもソフト面を掲載した販促を行い掘り起こすことが可能です。
FC契約に違反しない範囲で努力を行わなければ、FC本部に文句を言っても会員数は増えません。
コンサル提案:これまでの提案を行うこと。さらに低利用者フォロー、0回者フォローなどフィットネス業界が過去取り組んできたノウハウを実行すること。
まとめ
今号では、当社に寄せられる経営相談の内容について解説しました。
総合クラブは6ヶ月程度24時間ジムを大幅に下回る限定会費プランなどで集客好調。コロナ前の会員数の尻尾が見えてきたクラブも多いはず。
2,980円などの小型格安クラブも店舗数も増え現状では集客も好調とのこと。
その狭間で数が増えすぎた24時間ジムは進む道が見えずオロオロしている。今はそんな状況。追い風のフィットネス業界ですが努力なければ淘汰されます。あなたのクラブは大丈夫?
Comments