小型クラブは「コンプレックス」で稼げ50坪前後の小型クラブが陥る「中途半端」の罠

ちょこザップのような小型低価格24時間クラブが増え、エニタイムフィットネスに代表される24時間ジムも、今や全国どこに行っても見かけるようになりました。
24時間、好きな時間に使える。マシンも一通りそろっている。そして安い。
これだけ分かりやすい業態が普及した今、これからクラブを出店するのであれば、「なぜ、あなたのクラブを選ぶのですか?」という問いに明確な答えが必要になります。
今回取り上げたいのは、そのちょうど中間に位置する50坪前後の小型クラブです。
実は、このサイズが一番ポジショニングをつくりにくい。
コロナ禍に24時間ジムが一気に増えた背景には、事業再構築補助金などの支援もあり、これまでフィットネス業界とは縁のなかった企業が数多く参入したことがあります。
しかし、世の中に「出店すれば成功する」ほど甘いビジネスはありません。
勝てる理由を持たずに出店したクラブは、今まさに集客で苦しんでいます。
では、なぜ50坪前後のクラブが難しいのでしょうか。
24時間ジムの歴史を少し振り返ってみましょう。
初期の24時間ジムは70坪程度の店舗が多く、カーディオとウエイトマシンを一通りそろえれば、それなりの施設がつくれました。
フリーウエイトは狭く、パワーラック1台、45度レッグプレス、アームカールベンチ、ダンベル30kg程度という店舗も珍しくありませんでした。
ところが現在は違います。
フリーウエイトゾーンを充実させた110坪程度の店舗が増え、さらに200坪クラスの大型24時間ジムまで登場しています。
つまり、24時間ジムは「マシンがある」だけではなく、「広い」「マシンが多い」「フリーウエイトが充実している」という方向へ進化しているのです。
そう考えれば、50坪のクラブが何を削らなければならないのかは明白です。
フリーウエイトを削る。カーディオを削る。マシンを削る。
結果として、「一応全部ありますが、全部少ない」というクラブになってしまう。
ここで一つ、経営者に考えていただきたいことがあります。
問題は、フリーウエイトを使う人が何人いるかではありません。
見学者は、必ず他店と比較するということです。
「こちらは50坪ですべて揃っています」と説明しても、見学後に100坪、150坪の24時間ジムへ行けば、施設の印象はどうしても比較されます。
「こっちの方が広い」
「マシンが多い」
「フリーウエイトも充実している」
これでは、わざわざ50坪のクラブを選ぶ理由がありません。
実際、オーナーから相談を受けると、よくこんな話を聞きます。
「ほとんどの人はフリーウエイトなんて使いませんよ。フィットネス目的の人が多いので、50坪でも十分成立します」
確かに理屈としては分かります。
しかし、商売は「使うか、使わないか」だけで決まるものではありません。
お客様が比較したときに、「ここを選ぶ理由」があるかどうかです。
そして、この理由がないクラブほど、オープン後の集客で苦しむことになります。
低価格にするだけでは解決しない
では、価格を下げればいいのか。
もちろん、低価格路線で成功しているクラブはあります。
しかし、50坪のクラブが低価格で戦う場合には、別の問題が発生します。
家賃、人件費、システム費、借入返済などの固定費は、会費を下げたからといって消えてなくなるわけではありません。
価格を下げれば、当然1人当たりの利益は減ります。
通常価格で500人必要なクラブが、低価格にしたことで1000人必要になることだってある。
「安くすれば集まる」という発想は簡単ですが、「その地域に1000人集められる市場が本当にあるのか?」まで考えなければなりません。
もう一つの方法が、サービス提供型です。
最近よくあるのが、パーソナルジムの発展形のような小型クラブ。
スタッフを常駐させ、低価格のパーソナルトレーニングを提供する。
一見すると、施設の弱さを人で補えるため、理にかなっているように思えます。
ところが、ここにも落とし穴があります。
Webサイトを開くとパーソナル、パーソナル、パーソナル。
入会を検討している人からすると、「入ったらパーソナルを勧められるのでは?」と感じてしまう。
「フリー利用だけでいいのに、断りにくい雰囲気だったら嫌だな」
こう思わせた瞬間に、せっかくの「人」という武器が、逆に入会の障壁になってしまいます。
ここで重要なのは、世の中には明るく積極的な人と同じくらい、臆病で消極的な人がいるということです。
「分からなければスタッフに聞けばいい」「嫌なら断ればいい」。
そんな簡単な話ではありません。
「こんな体型でジムに行って大丈夫かな」
「マシンの使い方を知らないと思われないかな」
「パーソナルを断ったら嫌な顔をされないかな」
こう考える人は、実際にたくさんいます。
だからこそ、私は小型クラブほど「誰でも歓迎」ではなく、特定の悩みを持った人に選ばれるクラブを目指すべきだと思っています。
商圏500mの壁を越える
ここからが今回、一番お伝えしたいところです。
都内の駅近小型クラブで集客に失敗した店舗を見ると、会員の多くが半径500m圏から来ています。
駅前だから近隣住民が来る。
これは便利ですが、「そこにあるから行く」という理由だけでは、商圏が非常に狭い。
近くに新しい24時間ジムができれば、簡単に比較されます。
単独店舗であれば、私は500m圏だけを見て経営してはいけないと思っています。
必要なのは、「近いから通う」のではなく、「そこに行きたいから通う」という会員をつくることです。
例えば女性専用クラブ。
これは小型クラブとの相性がいい。
男性の目が気になる。
フリーウエイトを使う男性が怖い。
自分の体型を見られたくない。
こうした女性にとって、「女性しかいない」ということ自体が商品になります。
しかも、女性専用にすることで、高重量のフリーウエイト設備を大量に設置する必要もない。
50坪という制約を、設備を削る理由ではなく、コンセプトを明確にする理由に変えられます。
ただ、女性専用だけではまだ弱い。
私なら、ここに「悩み」を掛け合わせます。
例えば姿勢改善、骨盤ケア、産後のボディメイク、更年期世代のコンディショニングなどです。
整骨院や美容業界では、昔から「悩み」を入口にした集客が行われています。
フィットネスも、もっとこの考え方を取り入れていい。
「ジムに来てください」ではなく、
「姿勢を変えたい人のためのクラブ」
「人目を気にせずボディメイクしたい女性のためのクラブ」
「運動不足を解消しながら身体の動きを整えたい人のためのクラブ」
とする。
ここまで明確になれば、50坪でも戦えます。
「何をするか」ではなく「何を解決するか」
ここで一つ、商品づくりについて考えてみましょう。
小型クラブの経営者がやりがちなのは、「何を置くか」から考えることです。
マシンを入れる。
フリーウエイトを入れる。
マシンピラティスを入れる。
パーソナルを始める。
しかし、これでは競合店と同じ発想になってしまいます。
私なら逆に、「何を解決するクラブなのか」から考えます。
例えば「姿勢改善」をテーマにするなら、姿勢をチェックする仕組みをつくり、会費内で基本的なエクササイズを提供する。
さらに個別対応が必要な人には、パーソナルでより深く対応する。
女性のボディメイクなら、女性が安心してトレーニングできる環境をつくり、食事や運動についても一貫したサポートを行う。
つまり、パーソナルを売るのではありません。
「悩みを解決するための手段としてパーソナルがある」状態をつくるのです。
ここが大きな違いです。
パーソナルを売ろうとすると営業になります。
しかし、悩みを解決する商品をつくれば、パーソナルは必要なサービスになります。
この違いは非常に大きい。
小型だからこそ「専門店」になれる
50坪のクラブで、100坪のクラブと同じことをやろうとしてはいけません。
全部揃える必要はないのです。
むしろ、最初から「捨てるもの」を決める。
その代わり、「ここだけは絶対に負けない」というものをつくる。
これが小型クラブの戦い方だと思います。
例えば女性専用にするのであれば、男性向けの設備を減らして、その分、女性が安心して運動できる空間に投資する。
姿勢改善をテーマにするなら、マシンの台数を競うのではなく、評価と運動指導の質を高める。
ボディメイクなら、単にマシンを置くのではなく、結果が出るまでのサポートを商品にする。
小さいからこそ、一つのテーマを深く掘れる。
これが大型クラブにはない武器になります。
そして、目的性の高い商品はWeb広告やSNSとの相性もいい。
「駅前の50坪のジムです」では、広告を見ても何も感じません。
しかし、
「人目を気にせず運動したい女性へ」
「姿勢の崩れが気になる人へ」
「自己流のボディメイクから卒業したい人へ」
なら、広告を見た瞬間に「これ、私のことだ」と思ってもらえる。
ここまで来れば、500m圏の商圏から一歩外へ出ることができます。
コンプレックスは「価格競争」から逃れる武器になる
人間は、自分が抱えている悩みを解決できるものには、お金を使います。
髪の毛、肌、体型、姿勢など、昔からコンプレックスを解消する商品は数多く存在します。
もちろん、フィットネスクラブが「効果を保証する」ことはできません。
だからこそ、できることとできないことを明確にし、運動、コンディショニング、生活習慣のサポートなど、自分たちが提供できる価値をきちんと商品化する。
そうすれば、「月会費はいくらですか?」だけの勝負から抜け出せます。
「このクラブに通えば、自分の目的に近づける」
そう思ってもらえるクラブには、価格以外の選択理由が生まれます。
これが小型クラブにとって非常に重要なのです。
まとめ
50坪前後の小型クラブは、24時間ジムと同じ土俵で戦えば施設で負け、低価格ジムと戦えば価格で負ける。
だから、同じことをやってはいけません。
小さいことを弱点として考えるのではなく、小さいからこそできることを考える。
設備を全部揃えるのではなく、必要のないものを捨てる。
「何を置くか」ではなく、「誰の、どんな悩みを解決するのか」を決める。
そして、近いから通う会員だけではなく、目的のためにわざわざ通ってくれる会員をつくる。
これができれば、50坪は決して小さすぎるサイズではありません。
むしろ、特定の悩みに徹底的に応える専門店として考えれば、非常に面白いサイズだと思います。
折角クラブをつくったのです。
「近所にある普通のジム」で終わらせるのか。
それとも、「この悩みなら、あのクラブ」と言われる専門店になるのか。
私は、小型クラブの再生には後者しかないと思っています。
私のファイナルシリーズ第二弾、「小型クラブはコンプレックスで稼げ」。
今回は、小さいことを嘆くのではなく、小さいからこそできる戦い方を考えてみました。
皆さんのクラブ再生のヒントになればうれしいですね。





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